着物には様々な生地や織り方・染め方・模様があり、それらを全て総合して価値が決まりますが、今回は基本的な生地についてまとめています。
着物の生地の種類と特徴など
上布(じょうふ)
細く高品質の麻糸で織られたもの。品質としては高級品として知られていますが、用途としては普段着やちょっとしたお出かけほどの格の着物に使われます。夏用の生地で軽く肌触りも良いのが特徴。
縮緬(ちりめん)
絹を使用して平織りされた織物で振袖などに使われることが多い。(平織とは縦糸と横糸を交互に織り合わせる最もポピュラーな織り方)
横糸に撚り(より:ねじれのこと)の強い糸を使うことで生まれるシボ(細かいシワのようなもの)が特徴で、現在は絹に限らずポリエステルなどで織られたものも見られるようになりました。
羽二重(はぶたえ)
絹を縦糸2本・横糸1本を使い平織にしたもので、縮緬のような強撚糸(撚りの強い糸)を使用しないため表面は滑らかでツルっとした印象です。よく男性着物の紋付や昔は女性の喪服も羽二重で仕立てるのが普通でした。(現在では女性喪服に使用される多くは縮緬)また、染めを施す帯にもよく使用されます。
木綿(もめん)
綿で作られる生地のこと。普段着として親しまれ、浴衣などの生地としてもよく目にすると思います。自宅での洗濯が可能であるなどその扱いやすさからも人気が高い。
綸子(りんず)
柔らかく光沢がある生地で、主に後染めの着物を仕立てるのに用いられます。(後染め:生地を織りあげてから染めるもの→先染め:糸の段階で染めてから織るもの)振袖から長襦袢など用途は幅広いですが、その美しい光沢から礼装など格の高い着物に好まれています。
紬(つむぎ)
先染めによって染色された糸を織りあげるもので、独特の温かみと着心地の良さから人気が高い生地。高級品であっても礼装などの畏まった席では着用できません。
芭蕉布(ばしょうふ)
沖縄県で生産されるバショウを使い、その繊維を織りあげた生地。丈夫で軽く夏用着物などが仕立てられます。
ウール
羊の毛を原料とした生地で洋服でも定番として使われますが、着物では主に冬物が仕立てられます。厚手のゴワゴワしたイメージも強いですが、近年では薄く高品質のものも多くなりました。
お召し(おめし)
縮緬を織る際に横糸に撚りの強い強撚糸を用いるとしましたが、その撚りをさらに強くした糸を横糸に使って織られる生地。その為、表現されるシボは非常に強く、柄は先染めによって付けられます。(表面が滑らかでないため後染めでの染色は難しい)
紗(しゃ)
もじり織と呼ばれる織りで織られた夏用の生地。(もじり織:横糸に、縦糸2本を捩じりながら織っていくもの)普段着からセミフォーマルまで着用できます。透け感が強く涼しげなのが印象的。
絽(ろ)
紗同様にもじり織による夏用生地。フォーマルな場面でも着られるため留袖や訪問着なども仕立てられます。紗に比べて透け感は控えめ。
羅(ら)
紗・絽と同じくもじり織によって織られる夏用の生地。上記2つに比べて透け感が強く普段着用の着物や帯にのみ使用されます。紗や絽と比べても涼しさは抜群。
縮(ちぢみ)
縮緬の要領で強撚糸を使用することで出来るシボが特徴で、素材は「絹」「麻」「木綿」など様々。夏用の生地として用いられます。
ポリエステル
合成繊維による生地で、絹と比べて丈夫でシワが付きにくいため自宅での洗濯が可能。つるっとした見た目で最近では絹との見分けが難しいものもありますが、比較的安値で手に入れることが出来ます。
緞子(どんす)
厚手の生地で糸を先に染色する先染めを用いて織りあげて柄を表現したもの。その高級感から格の高い礼装時に締める帯素材や、着物では振袖や訪問着を仕立てるのによく使用されます。
絞り(しぼり)
布を縛ったり専用の機械で挟んだりすることで、染まらない部分を作り斑模様のような柄が付けられる染色方法で染めた生地。「鹿の子絞り」など鹿の背中に似ていることから「鹿」と名の付く種類が多く見られます。
唐織(からおり)
織りあげていく際に横糸2本ごとに地緯糸(じぬきいと)という糸を織り込み、それが浮き出ることで刺繍のような柄を表現した生地。生地自体は少し薄手ですが、礼装用の小物などに仕立てられることが多いです。
京都の西陣で織られる錦織(にしきおり)と呼ばれる織物の1種であり、西陣織(西陣で生産される織物の総称)の中でも最も高級とされています。
おわりに
以上が主な着物の生地の種類になりますが、種類の多さや細かさから着物の世界の奥深さが伺えますね。
買取においても生地の素材は金額を左右する重要なものですから覚えておいて損はないでしょう。是非参考にしてみて下さい。